適材適所

itoです。
私たちの仕事はある程度の材料・素材の知識が必要になります。その素材自体のもつ特性はもちろん加工性や価格までも考慮に入れながらデザインアイデアに反映させて行きます。つねに新しい素材や使い方の情報には敏感ですが、いざ新素材を使うとなると未知の部分が多く躊躇することもしばしばです。

特に伝統的なものの場合、今まで培われてきた素材や製法を捨てて全く新しい方法を取るのはかなりの勇気と決断が必要になります。
そんなジャンルの一つに楽器があります。昔から木材や金属などを使って多くの優れた楽器が生まれてきました。20世紀に入り電気を使って音を出す楽器も生まれ全く新しいジャンルになったものもありますし、昔ながらの製法のものと新しい作り方の物が共存しているジャンルもあります。
もともと弦楽器の一つであるギターは木製のボディに弦を張って共振音を出す楽器ですが近年エレキギターが登場し、ボディの共振ではなく弦そのものの振動を電気信号に変えていろいろな加工を施して音に出す技術も発達しました。
それでも昔ながらの製法のギターは廃れることなく作り続けられてきました。
また生ギター(アコースティックギター)とエレキギターとの中間にエレクトリックアコースティックギターという種類も生まれました。
初期は生ギターにピックアップを後付けしたものでしたが、現在は最初からピックアップを内蔵したものが主流になっています。
伝統的なメーカは木製ボディにピックアップを内蔵させたものを作り出していましたが、その既成概念を破ったのが『Ovation (オベーション)』というメーカーです。私は少しギターを弾くのでいつかOvationを持ってみたいと思っており、今回たまたま手に入れることができたのでご紹介します。

設立は1966年と遅く、米ヘリコプター製造会社をルーツに持つ変わった会社です。
ヘリコプターの木製のローターブレードが時代遅れになり木工技術者を失業させないために技術を生かせる楽器製造を始めたとか。
ローターブレードの加工技術を生かしたエレクトリックアコースティックギターを発売し、最初はあまりにも今までのギターと異なるもので受け入れられなかったようですが
1970年代に入って多くのミュージシャンに認められて現在に至っているそうです。

Ovationの最大の特徴は画像のリアのボディ形状で、木の板の組み合わせが当たり前だったボディをヘリコプターのローター加工技術を応用してリラコードというガラス繊維強化プラスチックで一体成型されています。


ボウルバックまたはラウンドバックと呼ばれ金型を使って全く同じものを作れるために概ね音の個体差が少なく、表板のサウンドホールの特長と合わせ独特の音響特性を持っているそうです。

このため聞くだけで「Ovationの音」と言われる独特の響きが生まれます。ただ癖のある音は好き嫌いが分かれる部分でもありますね。
また近年、ギターや楽器に使われる木材が希少になり『SDGs』の浸透に伴って一層注目されている森林伐採や木材の多量消費などへの一つの取り組みにもなっています。

新しい物と新しい素材の組み合わせだけでなく、伝統的な物に新たな素材や製法を用いることで新たな価値を生み出すことも出来るという実例ではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。