デザインウオッチャー山中です。先日、2121Design Sightで開催されている「The Original」展を観てきました。今回は、2回に分けて、この展覧会をご紹介します。
タイトルで連想するのは現代に広まった亜流のデザインではなく、本家本元のデザインを紹介するのだろうとと想像していました。もちろん、そういったデザイン作品も展示されていますが少し解釈が違うようです。今回の展示ディレクターである土田貴宏氏のあいさつ文によれば
「本展では、世の中に深く影響を与えるデザインを「The Original」と定義し、紹介します。ただし、ここでいう「The Original」は必ずしもものづくりの歴史における「始まり」という意味ではありません。多くのデザイナーを触発するような、根源的な魅力と影響力をそなえ、そのエッセンスが後にまでつながれていくものです。」
またこうも言っています。
「世界の流行や潮流(トレンド)に適応することではなく、目の前にあるデザインの参照点であり、すべての端緒となる「The Original」をたどること。そしてあらためて見つめ直すことは、デザインの時間を超えた文脈と、それらを生み出したデザイナーたちとのつながりをもたらすでしょう。」
とあります。つまり、デザインの仕事のなかで忘れがちなデザインの根源的な体験を、もう一回確認し「The Original」を生み出したデザイナーたちに目を向けよう、ということです。確かに、日々のデザイン業務で、このデザインの本家本元は〇〇だぞと、心の声を上げることが多々あります。まあ、そんなことをあげつらっても何の得にもなりませんから、口には出しません。長くデザインを仕事にしていたからこそ感じる、ベテランデザイナー特有の病的症状なのかもしれません。ただ、この展示会を観て、デザインの原点を知り、その素晴らしさを伝えることの大切さに気が付きました。
陰翳ミノムシ2012:三宅一生 プリーツプリーズの加工法を布製シェードに用いた照明器具
レ・スフレ モデル1959:ジノ・サルファッティ 吹きガラスの球体を用いたシャンデリア
サーリネンサイドテーブル1957:エーロ・サーリネン ワイングラスの脚のような緊張感のあるデザイン
TMM 1961:ミゲル・ミラ 木製のフレームに羊皮紙のシェードで構成されるフロアランプ
ドロンホテル1947:シャルロット・ぺリアン イージーチェア 日本の工芸に影響のあった女性
No.14 1859:ミヒャエル・トーネット この一脚から工場で椅子が大量生産できるようになった
ビストロ 1874:作者不詳 自動車メーカーのプジョーが作ったのがThe Original
チェスカチェア 1929:マルセルブロイヤー バウハウスが生んだモダンデザインのThe Original
アジャスターテーブル 1927:アイリーン・グレイ コルビジェがこの作品に嫉妬したと言われている
ユニバーサル・シェルビングシステム1960:ディーター・ラムス 壁面にレールを設置、ユニットを固定
クラシック・ユニバーサル・シザーズ1967:オロフ・ベックストローム まさに人間工学の鑑
電卓 1987:ディーター・ラムス/ディートリッヒ・ルプス まさにモダンデザインのお手本
フォルモサ 1963:エンツォ・マーリ 高名な万年カレンダー、ヘルベチカのフォントが美しい
時計・温度計・湿度計 1980:ヘニング・コッペル 少しもこびていない姿が美しい
Kシリーズ 1972:倉又史郎 イタリアンデザインには決してできないジャパンデザイン
ルイーザ アームチェア 1955:フランコ・アルビニ 知る人ぞ知る銘品、細部の仕上げに注目
クーポ 1957:ブルーノ・ムナーリ 最近はまず見ない灰皿、とは言えこれも傑作
ケメックスコーヒーメーカー1941:ピーター・シュラムボームは化学者 だから実験器具にも見える http://chemex.obt-japan.co.jp/history.html
G型醬油差し1958:森正洋 蓋の納め方、胴のくびれ、注ぎ口すべてが配慮されている
後編に続きます。